人間の赤ちゃんは早産?「生理的早産」についてのお話 

2021.01.27 赤ちゃんのあれこれ

今日は、人間の赤ちゃんと動物の赤ちゃんの生まれる時期についてのお話をしようと思います。人間の赤ちゃんは、「生理的早産」といわれています。どういうことなのでしょうか。人間以外の動物と比較して説明しますね。 

 

1. 離巣性と就巣性 

人間の赤ちゃんは、他の動物と比べると頭が大きく体や足が短いですね。そうすると、当然歩いたり運動したりということはできません。運動能力が未熟なのです。 生物学者のポルトマンという人は、人間の赤ちゃんは「生理的早産」だと提唱しました。 

 

鳥の雛は、孵化直後から目が開いて自分で歩くことができる種類(ヒヨコなど)と、それらができずに親鳥の世話が必要な種類(ツバメなど)とがあります。哺乳類の赤ちゃんも同様に、体毛があり感覚器官や運動能力が成熟して生まれてくる種類(サルなど)と、体毛がなく未熟のまま生まれてくる種類(イヌなど)とがあります。 

ポルトマンは、生まれた直後の状態によって、前者(比較的成熟している)を離巣性、後者(比較的未熟である)を就巣性と名付けましたまた、離巣性の動物は、一度に産む子供の数が少ないため、妊娠期間が長く成熟した子どもを出産するのです。一方、就巣性の動物は一度にたくさんの子どもを産みます。成熟した子どもを出産すると母体に負担がかかるため、未熟のまま産まざるを得ないのです。 

 

離巣性  就巣性 
一度に産む子どもの数が少ない  一度に産む子どもの数が多い 
孵化直後から目が開いて自分で歩くことができる  体毛があり感覚器官や運動能力が成熟して生まれてくる  孵化直後は目が見えず歩くことができない  体毛がなく感覚器官や運動能力が未熟のまま生まれてくる 
ニワトリ(ヒヨコ)  サル  ツバメ  イヌ 

 

2. 人間の赤ちゃんは? 

人間の妊娠期間は他の動物に比べて長く、一度に産む子供の数は少ないです。また、人間の赤ちゃんの感覚の能力(視覚・聴覚など)は成熟しています。 この点では、離巣性の特徴を一致しますね。でも、運動能力が未熟であるということは就巣性の特徴です。これを二次的就巣性といいます。 

 

人間の場合、大脳が大型化したため、頭が大きくなる前に出産しないと母体に負担がかかります。その結果、早産が通常化して運動能力が未熟なまま生まれてくるのです。このことを「生理的早産」といいます。 

 

 

3. 現代の出産 

人間は、二足歩行をするようになって骨盤の大きさが狭くなり形も変化しているため、哺乳類の中で最も難産であると考えられています。人間の赤ちゃんが生まれるときには、酸素が足りなくなったり出産が長引いたりしやすいのです。 

 

医療の進歩や専門家の教育によって、今の日本では出産で命を落とす赤ちゃんやお母さんは少なくなりました。しかし、赤ちゃんが狭い産道を通って生まれてくるという現象は何も変わっていません。産道という見えないところで赤ちゃんが生まれようとしていることを、私達医療従事者はとても注意深く見守っています。 100%安全な出産はありません。でも、全ての赤ちゃんが元気に無事に生まれてほしいと願っています。その思いをいつも胸に抱えながら、赤ちゃんが元気よく産声あげるのを待っているのです。 

 

 

まとめ 

首もすわらないし、全てのことを親に頼るしかない赤ちゃんを育てることに不安を持つ親御さんも多いことでしょう。でも、 母乳やミルクを飲ませて、排泄をきれいにしてあげる、きれいな衣服を着せてあげる、泣いたらそれに対応するといった赤ちゃんの生理的な欲求を満たしてあげると、ひとまず大丈夫です。 

 

不安にならない親はいないといいます。周りも巻き込んで一緒に子育てができると理想です。親もだんだんと育っていくものです。気負わずに楽しんで子育てできるといいですね。 

 

 

【参考文献】 

1. 「図解雑学 発達心理学」山下富美代 編著 ナツメ社 

 

2. 助産婦雑誌 51巻5号 (1997年5月)「ヒトの『生理的早産』」 島田 信宏