恥ずかしがる行動の裏にあるもの 〜お母さんは安全基地〜 

2020.08.12 赤ちゃんのあれこれ

お母さんから離れない、離れてもすぐに抱きついてくるなど、恥ずかしがり屋なお子さんの親御さんは、「これから大丈夫かな」とちょっと心配になるかもしれません。 

この恥ずかしがっているような行動の裏には、子どもの葛藤があります。

また、子どもが徐々に行動範囲を広げていくためには、安全を確認できる存在が大切だといわれています。

恥ずかしがる行動と安全確認、行動範囲の広がりは、どうつながっていくのかをお話しましょう。 

 

1. 単に恥ずかしがり屋というわけではない 

母親が道でばったり友達に会って、話をしてる場面を想像してみてください。

そんなとき、小さな子どもは、親の後ろに隠れてしがみついたり、洋服を引っ張ったりしていることがあります。

時々、お母さんが話している相手をちらっと見て、また隠れるという行動をします。

母親の友達が「恥ずかしいのかな」と子どもに声をかけると、より母親の後ろに隠れてしまうのです。

でも、しばらくすると友達をじっと見て、興味を示して触れようとしたり触れたりしてきます。「あら、なあに?」というと、またお母さんに抱きつき顔をそむけてしまいます。

この行動は、ただの恥ずかしがり屋ということではありません。 

 

これは、お母さんと外出して、色々な刺激がある周囲のものや雰囲気が魅力的な状態です。

そこに、お母さんの友達に会うというハプニングが生じて、驚いて危機を感じているのです。子どもはお母さんに抱きついたり、洋服を引っ張ったりして自分の安全を確認しているのです。

安全かも」と感じると、より冒険を試みるのです。

この行動を繰り返すことによって、子どもの活動範囲は広がって行きます。 

 

2. 安全基地としての役割 

このように母親(父親)が子どもの安全基地としての役割を果たすためには、子どもの不安を解消し、安心感を与えられる存在であることが欠かせません

親子の絆をもとにした安定した関係の上に成り立っているのです。安心できる安全基地があるからこそ、子どもは不安や危機を感じてもそれを乗り越えられる行動を起こしていくことができるのです。 

 

 

3. アタッチメントの示し方

 

これに関連して、子どもと母親の情愛の絆であるアタッチメントについてご紹介します。エインズワースという研究者が、アタッチメントの示し方を分類しました。 

下記の方法で、1歳の子どもが母親に対して形成しているアタッチメントの質を測定しました。 

 ① 実験者が親子の部屋に案内する。母親は子どもを抱いて部屋に入り、実験者の指示で子どもを降ろす。実験者は退室。

② 母親はイスに座り、子どもはおもちゃで遊ぶ

③ 知らない人が入室、イスに座る。

④ 母親が退室、知らない人は子どもに近寄り、遊びを働きかける。

⑤ 母親が入室、知らない人は退室。

⑥ 母親も退室、子どもは一人残される。

 ⑦ 知らない人が入室、子どもを慰める。

 ⑧ 母親が入室、知らない人は退室。 

 

このように、見知らぬ部屋に子どもを置いたり、知らない人を入室させたりして、子どもの不安を高め母親に対するアタッチメント行動が起こりやすいようにして観察したのです。 

 

この結果、子どもが示すアタッチメントを3つのグループに分類しました。  

A. 不安定で否定的なアタッチメント  母親が退室してもぐずらない。母親が戻ってきても無視する。 
B. 安定したアタッチメント  母親を安全基地として使い、退出するとぐずるが母親が戻ると喜ぶ。 
C. 不安定なアタッチメント  母親の退室で極端に不安がり、戻ってきてもなかなか機嫌が直らない。 

 

ある一定の条件で行った実験ですので、普段のお子さんの様子とは違ってくるでしょう。また、これらの反応は文化的な影響が大きいとされています。 

 

まとめ 

子どもが行動範囲を広げていくために、親との関係において子どもの不安を解消したり安心感を与えたりできていることが必須です。

親を安全基地として行きつ戻りつしながら、安全確認をしています。

ここ(親のもと)に来れば大丈夫という確信が持てて、より行動を広げ冒険を試みるのです。 

恥ずかしがり屋だなと思っている行動には、こんな子どもの葛藤が隠されていたのですね。

なかなか冒険を試みることができない場合は、慎重派なのかもしれませんよ。

温かく見守ってあげてくださいね。 

 

 

【参考文献】 

「図解雑学 発達心理学」山下富美代 編著 ナツメ社 

 

 

 

 

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