親の不安は子どもに見抜かれている!? 

2020.07.01 赤ちゃんのあれこれ

よく子どもと外に遊びに行ったり、初めての場所に行ったりすると、子どもが戸惑ったり、親の顔を見たりして、様子を伺っているような行動をとっていることはありませんか。 

子どもはどうしたら良いかわからないときには、信頼できる人(多くは親)の顔を見て、自分の行動を決めるのです。 

親が不安な表情をしていると、子どもはそれを読み取ることができるといわれているんですね。 

今日は、親の表情と子どもの行動の結びつきについてお話します。 

1. 「社会的参照」という行動 

子どもが初めてのことに出会ったとき、判断に困ったときに起こす行動です。 

例えば、児童館などに行って、 子どもが初めて見るおもちゃに「触りたいけど、ちょっとこわい」という気持になったとき、一緒にいるお母さんやお父さんの顔を見ます。 

そして、親が笑顔でいると触り、怒ったような不安な顔をすると触らないのです。 

これは、「社会的参照」と呼ばれる行動です。 

  

2. 母親の表情と子どもの行動 

子どもがいつから表情に伴う意味を理解して、自分の行動に役立てるかを研究した人がいます。 

その人は、母親の表情が1歳ほどの子どもの行動に、どのような影響を及ぼすかという実験を行いました。  

段差があるように見せかけた装置を準備しました。 子どもを段差が浅く見えるところに座らせて、深く見えるところにはおもちゃを置きます。

 親は、深く見える方の端で子どもを見ているのです。 親の表情でそのおもちゃを取りに行くかどうか観察します。 

母親が笑顔の時には、75%の子どもはおもちゃを取りに行きます。 

しかし、母親が恐れの表情をしたときには、全ての子どもがそのおもちゃを取りに行かなかったのです。 

さらに、深い段差があるように見せかけた場所の段差をなくした場合は、母親の表情に関係なくおもちゃを取りに行きました。 

段差が見えると不安な気持ちになり、段差がなければ大丈夫ということもわかっていますね。 

このように、 1歳ほどで親の表情を読み取って、自分の行動に結びつけることができるようになるのです。 

 

3. 普段の表情も見ている 

子どもが自分でどのように行動したら良いのかわからないとき、このように信頼できる人の表情を観察します。 

こうして、だんだんと普段の表情にも意味があることを学んでいきます。 

親が笑っているときには、ポジティブなイメージ、怒っていたり泣いていたりする場合はネガティブなイメージを読み取るようになるでしょう。  

他に、普段の社会的参照にはどんな場面があるかというと、例えば子どもが転んだり頭を打ったりした場面で、親が心配そうにしていると泣くかもしれません。 

でも、 親が「大丈夫!」と笑っていると、泣かずに一人で立ち上がるかもしれませんね。 

普段の生活の場でも、親が不安そうな表情をしていると子どもはそれを敏感に受け取って不安になってしまうようです。 

表情の違いから感情を見分けて、言葉で基本的な感情を表現できるようになるのは、4歳頃からといわれています。 

4. 大人も社会的参照をする場面がある! 

大人の社会的参照は、会議などで自分の意見を発言した場合、それが妥当だったかどうかの判断は、上司や会議の参加者の表情や意見から判断すると思います。上司が頷いて聞いていてくれたら、それだけで安心しますよね。 

これも社会的参照なんですよ。 

 

まとめ 

1歳といえども親の表情を読み取ることができるんですね。 

1歳頃からできるなんて!」とびっくりされた方も多いと思います。 

言葉によるコミュニケーションが充分にできない時期です。 

こうやってこの頃の子どもは、初めてのものや危険、どうしたらいいのかという不安を社会的参照という行動を用いて乗り越えているのですね。 

それが、どんどん発達していくと自分で物事を考えていく力がついていくのです。 

楽しみに見守ってあげたいですね。 

 

【参考文献】 

「図解雑学 発達心理学」山下富美代 編著 ナツメ社