愛着形成って何?親は何かしないといけないの? 

2020.08.05 赤ちゃんのあれこれ

「愛着がある」という言葉はよく使われますね。育児相談を受けていると、断乳やしつけなどに関する相談で、 「赤ちゃんへの悪い影響はありませんか」と質問を受けます。 

 

親御さんは、自分が行うことに対して赤ちゃんへの影響を常に考えています。自分の子どもに対する愛着を感じ、もし少しでも悪い影響があるなら知りたい、回避したいという優しい親の想いを感じます。 

 

親御さんが赤ちゃんのためを想って行うことの中で、赤ちゃんに悪い影響を与えることはほとんどありません。といっても、赤ちゃんのために一番いいのは何かを探っていらっしゃる方が多いですね。親御さんが、特にお母さんが子どもを想うように、子どもも想いを持っています。今回は、愛着形成についてお話しましょう。 

 

1.母と子供を結び付けるもの
 

以前は、母と子どもを結びつける要因は、生命の維持のための依存だという考え方がありました。どういうことかというと、馬やゾウなどは生まれて間もなく立ち上がって自分で歩きますね。でも、人間は生まれて1年ほどは歩くこともできず、すべてのことにおいて保護し、養育していかなければなりませんよね。その意味で、母親と子どもは依存関係にあるとされてきたのです。 

 

でも、 母親との接触、例えば授乳や優しく撫でる、ぬくもりを与える、抱っこするなどのお互いに触れることが母と子どもを結びつけているのはないかという考えが出てきました。そのことを証明する実験が次のようなものです。 

 

 

2. ミルクかぬくもりか 

子どもは、ミルクとぬくもりのどちらを好むかというおもしろい実験を小ザルに対して行った人がいます。 

 

胸に授乳装置がついた針金で作られた母親と、授乳装置はなく布で作った母親の両方と過ごした小ザルの行動を観察したのです。 子ザルは、おなかがすくと針金の母親のところに行ってお乳を吸うが、空腹が満たされると1日の大半は布製の母親のそばで過ごしていました。 

 

そこで、子ザルが怖がるような奇妙なクモのようなおもちゃを与えると、どう行動するかを観察したのです。結果は、子ザルは布製の母親に抱きつきました。 

 

このように、 母と子どもの絆には単におなかを満たすことで生まれるものではなく、しがみついたり、抱きついたときの感触や安心感を与えるという身体的なふれあいが大事だという結論が出てきました。 

 

20世紀初頭の別の研究もあります。 

乳児院や孤児院では、入所している子ども達の高い死亡率や発達の遅れが目立っていました。 

当時は風邪がひどくなって肺炎で亡くなる子どもが多かったので、風邪予防の医療対策がとられましたが、成果はありませんでした。ところが、一部の施設で個人的な接触や子どもの身体を撫でるなど看護方法をとったところ、死亡率が減少したのです 

 

 

3. 何が大切か 

子どもと母親(母親とは限らず、母親のように密接な関係を持てる人物)の密なかかわりは、継続的に維持されることが大切なのです。このようなかかわりをすることは、身体的な疾患に限ったことではなく、知的な発達にも良い影響があるという報告がされています。 

 

ただ単に母乳やミルクを与えて空腹を満たすだけではなく、愛情をもって赤ちゃんに接することが大事なのですね。例えば、優しい声で話しかける、抱っこする、目を見る、肌を接触させるなどです。 

 

まとめ 

愛着形成というと、「何か特別な行動のことをいうのかな」と身構えていた親御さんもいるかもしれません。説明したとおり 、愛情を持って赤ちゃんの日々のお世話をすることで愛情は伝わっていきます。愛着形成に大切なことは、母親に限ったことではなく、赤ちゃんに接するすべての人に関係することとして受けとめて頂ければと思います。 

 

 

 

【参考文献】 

「図解雑学 発達心理学」山下富美代 編著 ナツメ社 

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