【虫歯の話・第1弾】 虫歯が心配!どうやって予防したらいいの?〜母乳と虫歯編〜
2020.07.15 赤ちゃんのあれこれ育児相談をしていると、「『母乳は虫歯の原因になるから早くやめたほうがいい』と言われたけど本当?」という質問の多くお受けします。
虫歯の問題は赤ちゃんの月齢が浅いときから、就学前、小学生、中学生になっても続きます。
「母乳と虫歯」「おやつと虫歯」「歯磨きと虫歯」 と、赤ちゃんの食べるものが増えてくると、虫歯に関するあれこれが気になりますね。
これらの関係を一つずつお話していきたいと思います。今回は、第1弾「母乳と虫歯」についてです。
母乳を与えていて、夜中の授乳がまだ続いている方も多いのではないでしょうか。
結論からいいますと、「母乳を与えているだけ」では虫歯にはなりません。これは本当です。
なぜかをお話していきましょう。
多くの赤ちゃんの場合は、歯が生えるとすぐに虫歯の原因菌の「ミュータンスレンサ球菌」(以後、ミュータンス菌)が常在菌として歯の表面で育ち始めます。
このミュータンス菌は、食べかすや母乳などに含まれている糖質を栄養にしてプラーク(歯垢)を作って増えていきます。
赤ちゃんが母乳を飲むときは、舌を突き出して、乳頭を上顎に押しつけてしごいて飲みます。
上の歯に母乳がつきやすいため、母乳を飲みながら寝ると母乳が上の前歯の周りに停滞します。
しかも 寝ている間には、唾液の分泌が減るため虫歯になりやすいのです。
反対に下の前歯は舌で覆われていて、母乳はつきにくく、唾液によって洗い流されやすいので虫歯になりにくいといわれています。
虫歯は、歯の表面に汚れがついたままになって、ミュータンス菌が繁殖することで起こります。
ご飯を食べて、寝る前に歯磨きをせずに母乳を飲んで寝た場合、歯の汚れに母乳が加わってミュータンス菌の良エサとなり、虫歯ができやすくなります。
唾液は、口の中の汚れを流し、口の中をきれいに保つ働きがあります。
寝ているときは唾液の分泌が減るため、口の中の汚れが洗い流されにくくなります。
その状況で歯の表面に汚れがついていると虫歯になりやすいというわけです。
歯磨きをしたら何も食べたり飲んだりしないのが一番ですが、夜の授乳が必要な赤ちゃんもいますよね。
虫歯対策は、「歯の汚れを取り除く」ことです。
食べた後に、歯磨きやガーゼで歯をきれいにできればいいのですが、食事のたびに行うことは現実的に難しいこともあります。
歯がそれほどたくさん生えていない場合は、ガーゼで歯の表面を拭くだけでも効果があります。
赤ちゃんが眠ってからしか歯をきれいにできない場合、それでも大丈夫です。
毎回の食事で歯をきれいにできない場合は、食事の後にお茶や水を飲ませるだけでもずいぶん歯の汚れが取れます。
歯の表面に汚れを残さないようにするといいでしょう。
赤ちゃんのミュータンス球菌は、親(養育者)から伝播するとされています。
虫歯が多い親の唾液にはミュータンス菌がたくさん含まれています。
たとえ、虫歯がなくてもミュータンス菌を赤ちゃんに伝播しないために、食べ物を口移しで与えたり、お箸を共有したりすることは避けてくださいね。
親の虫歯を治すことやお口のケアも大切ですね。
母乳そのものが虫歯の原因というよりは、お口の中のケアの問題です。
しかし、早い時期からミュータンス菌が多く、虫歯になりやすいケースもあります。
どんな環境であれ、子どもの歯を守れるのは親です。
将来健康な歯で過ごせるように、早いうちから気をつけてあげたいですね。
【参考文献】
小児保健に関する小児科と小児歯科の検討委員会の設立について 日本小児歯科学会
https://www.google.com/url?sa=t&source=web&rct=j&url=http://www.jspd.or.jp/contents/common/pdf/download/06_03.pdf&ved=2ahUKEwjnzMDwyrzkAhWVT30KHUf4CzgQFjADegQIBBAB&usg=AOvVaw3-TEvef3S58FLEChYEmm1p&cshid=1567786302830