生まれたばかりの赤ちゃんに点数をつける?アプガールスコアと母子健康手帳について 

2020.06.03 赤ちゃんのあれこれ

皆さんは母子健康手帳の分娩記録のページをじっくりと見たことがありますか。赤ちゃんが生まれたときの状況が書かれているページです。 

そこに 「アプガールスコア点」と書かれている人もいるかもしれません。本来は書き込む欄がないため、書いても書かなくてもどちらでも良いものです。でも、出産を介助した者によって書くこともあります。 

アプガールスコアは、赤ちゃんの状態を表し、専門家が見るとひと目でどんな状態で生まれたかがわかるものです。 

 今日は、このアプガールスコアについてちょっと専門的なことをお話しようと思います。その前に、母子手帳についても紹介します。 

1. 母子健康手帳の記録 

母子健康手帳(母子手帳の正式名称です)には、出産の記録として、生まれた日時、出血量、経膣分娩か帝王切開か、分娩を介助した医師や助産師の氏名や場所などを記載するページがあります。 

実は、この母子健康手帳は、日本が始まりなんです。重要な情報が簡潔に書かけるようになっていて医療者にも評判を呼び、現在では、世界各地で母子手帳を参考にしたものが使われるようになりました。なんと、中身はずいぶん質素ですが、アジアやアフリカでも使用されているです。 

母子健康手帳は、子どもが6歳になるまでの成長記録が書けるようになっています。妊娠したときから、出生の記録、各年齢の健診、予防接種などの記録が1冊になっています。この記録は日本全国共通です。 

その他の情報や地域の情報は、それぞれの自治体に任されています。今では、20歳まで書ける手帳も出ているようですね。 

また、「母子」健康手帳とすると、「父」がないので「親子健康手帳」としよう という意見もあります。 

手帳の始めの方のページには、妊娠した時の気持ちを書く欄があります。お父さんも積極的に書かれると、子どもが大きくなったときに喜ばれるのではないでしょうか。 

 

2. アプガールスコアとは? 

「アプガールスコア○点」と書かれると、「うちの子、点しかないの?」と心配になる親御さんもいるかもれませんね。 

アプガールスコアは10点満点で、出生後1分後と5分後に判定します。下記の表を参考に医師や助産師は点数をつけています。 

 

観察項目 

0 

1 

2 

皮膚色 

チアノーゼ/蒼白 

体幹ピンク手足チアノーゼ 

全身ピンク 

心拍数(毎分) 

なし 

100未満 

100以上 

刺激 

なし 

顔をしかめる 

くしゃみ・咳 

筋緊張 

四肢弛緩 

四肢がやや屈曲 

活発に動かす 

呼吸数(毎分) 

なし 

緩徐/不規則 

強く泣く 

 

正常で元気とされているのは、7-10点です。ただ、6点やそれ以下だと、とても危険な状態で回復不可能なのかというと、必ずしもそうとは限りません。酸素を送ったり、刺激を与えたりして蘇生すると元気になっていく赤ちゃんもいます。 

この観察項目は、新生児仮死を客観的に判断することができますが、

☑「早産」

☑「呼吸が弱い(泣き声が弱い)」

☑「筋緊張が弱い」

などがあれば、アプガールスコアをつけるよりも早く、蘇生を行います。その後の赤ちゃんの成長はそれぞれです。 

出産の経過が順調で、元気に生まれて母子健康手帳にアプガールスコアが書かれ ていないとしても、特に気にするものではありません。 

このアプガールスコアは、アメリカのアプガー医師によって考案されたもので、世界的に使用されているものです。 

「自分の赤ちゃんに点数をつけられているなんて!」と、ちょっと引っかかる親御さんもいるかもしれませんが、アプガールスコアは、赤ちゃんの状態を把握する大切な観察項目です。医療者が介助するすべての赤ちゃんにつけられているものといえます。 

まとめ 

今日は、使用されている母子健康手帳とアプガールスコアについてお話しました。2つのエピソードは一般には知られていないことも多く、時々質問を受けます。母子健康手帳のことも 「日本発祥ですよ」と説明すると、ちょっと意外そうな反応が返ってきます。 

日本は、母子健康手帳を始め、国民皆保険(すべての人が健康保険に加入する仕組み)など、世界各国から注目される医療保健制度を持つ国なんです。 

自分が作ったものではありませんが、世界から注目されるほどと言われると、ちょっと誇らしい気分になりませんか。 

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