赤ちゃんが身体をビクッと震わせる!大丈夫?
2019.09.06 赤ちゃんのあれこれ助産師をしていると親御さんからよく相談をお受けすることがあります。
「赤ちゃんがよく身体をビクッと震わせるのですが、大丈夫でしょうか?」という質問です。
これは、「モロー反射」といって心配するものではないんです。
実は、このような赤ちゃんの不思議な動きには、モロー反射の他にもたくさんあります。
ここでは、赤ちゃんの不思議な動きのご紹介とその意味についてお話します。
1.赤ちゃんの不思議な動きは「原始反射」や「原始行動」
赤ちゃんには、「原始反射」「原始行動」といって生まれたときから備わっている能力があります。一つずつ見ていきましょう。
①原始反射
口唇探索反射 | 赤ちゃんの口の周囲にものが触れると、それを求めるように探す仕草をする。首をそのものに向かって回す行動も見られる。 この反射は、食行動の基礎になっていると考えられている。 |
---|---|
吸啜(きゅうてつ) 反射 | 口唇探索反射によって、口に入れてリズミカルに吸う行動が見られる。乳頭に吸い付いて母乳を吸うことができるのは、この原始反射が備わっているからだと考えられている。 |
把握反射 | 赤ちゃんのてのひらをそっと撫でると、反射的につかもうとするかのように手を握る。 |
バビンスキー反射 | 赤ちゃんの足の裏を刺激すると、足の指を広げる動作をする。足の裏の部位によって、手を握るように足を指を曲げる動作をする。 |
モロー反射 | 抱きつき反射とも呼ばれている。外部からの刺激の他、音や光によって、数秒の間全身をビクッと震わせて、両手を広げる行動をする。生後3ヶ月ほどで消失する。 |
追視反射 | 生後2日目程の赤ちゃんの目の前25cmくらいの距離で、小さなぬいぐるみなどを見せてゆっくりと動かすとぬいぐるみを目で追うような動きをする。 |
自動歩行反射 | 生後2週間までに見られる。赤ちゃんの身体を両脇で支えて、両足がやっと床に触れるようにして、ゆっくりと前に移動させると淡河に足を上げて歩いているような行動をする。生後1−3ヶ月に見られる「乳幼児原始歩行」も似たような動作である。 |
緊張性頸反射 | 赤ちゃんを仰向けに寝かせて、顔がどちらかに向いていると、顔を向けた方の手足を伸ばし、反対側の手足を曲げる動作をする。生後4−5ヶ月でなくなる。 |
モロー反射は、親御さんがその動きにびっくりして「赤ちゃんがけいれんみたいになるんです」「赤ちゃんがよく震えてるんです。寒いのでしょうか」と、よく質問を受けますが、大丈夫なんです。原始反射のお話をすると、安心されます。何もせずに見守ってあげてくださいね。
②原始行動
原始反射と似ていますが、刺激があるなしにかかわらず起こる行動です。
自発的抱きつき行動 | 赤ちゃんの身体がビクッと震えて両手を広げるモロー反射のような動きで、外部からの刺激を受けていなくても、抱きつくような動きが見られる。生後3ヶ月を過ぎると消える。 |
---|---|
自発的微笑行動 | 「新生児微笑」とも言われている。浅い眠りのときに出るもので、赤ちゃんを見ていると「あ、笑った」とこっちも嬉しくなる。顔の筋肉の収縮とも言われており、音などで誘発されることがある。 |
自発的吸啜行動 | 深い眠りから浅い眠りに移るときに表れ、乳頭を吸うように口を動かす。生後3ヶ月頃まであり、口による遊びや喃語の発生に関わっていると推測されている。 |
泣く行動 | 手足の活発な動きと同時に泣く。生まれたばかりのときには、単調な泣きが多いが、生後17日を過ぎると泣き声が複雑になっていくる。 |
「自発的微笑」は、生まれて間もない入院中でも見られます。自然に赤ちゃんが笑ったと思ってしまいますが、実は赤ちゃん自身は笑おうと思って笑ったわけではないのですね。ちょっと残念な事実かもしれませんが、この「笑顔」を見ると「かわいい」「お世話にあげたい」という気持ちになりますよね。親へのご褒美とも言われているんですよ。
2.原始反射の意味
原始反射の多くは、生後数週間から数カ月で消失するんです。なぜでしょうか。
精神機能を司る大脳皮質が発達して、反射中枢の中脳に対する支配力が増し始めていることを意味しています。このために、
触れたものを掴むという把握反射が、自由に掴む能力に置き換わる
のです。こうして、だんだんと反射ではなく自分の意思で動くことができるようになるにしたがって、心の働きも豊かになってくるのです。
3.おわりに
赤ちゃんの不思議な行動には、生きていくための基礎や脳の発達が関係しているのですね。我が子に接しているときに、このような反射のことを知っていると「本当にそのとおりだ!」と感動し、不要な心配をせずにすむでしょう。
【参考文献】
改訂3版 保育士養成講座 発達心理学第3巻
改訂保育士養成講座編纂委員会/編 全国社会福祉協議会 2007年