モンテッソーリの言語教育 後編
2020.10.01 モンテッソーリ教育前回の言語教育では、「語彙の拡充」の分野についての提供を紹介しました。
今回は、「書くための直接準備」について紹介します。
モンテッソーリ教育の「書く」ことは、五十音を順番に書く練習から始めることはありません。子どもが興味を持つようにプログラムされています。
では実際の提供を見ていきましょう。
「砂文字板」
対象年齢・・・3歳以上
教具・・・・・縦9.7cm、横18cmの木の板に再度ペーパーでプリントされた五十音の文字。
文字の大きさは右3分の2の位置に入るようにする。
右3分の1の空白部分は左手をのせ、板をしっかり押さえるようにする。
この空白部分は子どもの字 の正しい向きを知らせるためにも役立つ。別に壁文字も用意する。大きさは、 横15cm、縦52cm。
前段階の練習・・・砂文字板を使用する前に行う。
2歳半~3歳で参加できる。
砂文字は使用しない。
子どもを集め、ある音の含まれている言葉を探す。
その音で始まる言葉、中にある言葉を探す。
その音で始まる友達の名前を探す。
砂文字を提供する頃には頻繁にこの活動に誘う。
提供法・・・・・・砂文字の箱を持ってきて、音も形も違う2、3文字を選び、1枚を子供
に見せてから左手でしっかり押さえ、右手人差し指と中指の腹で砂文
字の上を筆順通りになぞる。ゆっくりとしたなぞり方で、なぞった後、
はっきりと発音をする。何度か繰り返す。文字の順序は特にない。
子どもの活動・・・提供通り。
目的・・・・・・・筆順の原則を知る。正確に書くための準備。筋肉と意志の調整。
「鉄製はめこみ」
対象年齢・・・・・3歳~5歳
教具・・・・・・・10組の鉄製幾何学図形。寸法は14cm×14cm。各形は正方形、
長方形、三角形、円、台形、五角形、卵形、楕円形、曲線三角形、
花十字形。
同寸の色画用紙、下敷き、鉛筆入れ
提供法・・・・・・用具の取り扱い方、運び方を子供に示してから、机の上に運ばせる。
お盆に下敷き、紙、鉄製はめこみの枠、図形、鉛筆入れ、鉛筆
の順に入れて運ぶ。
下敷きの上に色画用紙をのせ、その上に枠をのせて左手でしっかり
押さえ、色鉛筆で枠の内側の縁に沿って、ゆっくり描く。
枠を取り除き、できた形の上にぴったり幾何図形を置き、2本目の色鉛
筆で外側の輪郭線を描く。こうして2本の線で囲まれた図形ができる。
輪郭の色を塗る。このとき、はみ出さないように指導する。
慣れてきたら、いくつかの図形を組み合わせる、1つの図形を動かし、
組み合わせて図形にする。
子どもの活動・・・提供の通り。
目的・・・・・・・書くものをもって、書くことを覚える。意志と運動の調整。
芸術的感覚の洗練。左右対称の視覚の洗練。
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まとめ
モンテッソーリ教育の特徴でもりますが、感覚器官を働かせることが、文字の習得にも
生かされます。指先でざらざらした文字をなぞることで、脳に文字の刺激を与えます。
鉛筆を持たされて、イヤイヤ文字を書かさせる、ペーパー型の文字練習とは全く異なり
ます。ざらざらをなぞる・・・なんて楽しいのでしょう。感覚の敏感期に始めるので、
より一層指先も鋭敏になります。
子どもが、園庭や公園で熱心に砂に何かを描く姿を目撃したことはありませんか?
子どもは指で描きたいのです。その子どもの特徴を生かした教具が「砂文字板」です。
「鉄製はめこみ」 では、いよいよ鉛筆を持つ時期に始めます。枠に沿って図形をなぞり、
枠を外すとキレイな図形が描かれています。そのことに子どもは深く感動をします。
もっと描きたい!という意欲が芽生えます。そして紙や下敷きの扱いも慣れてきます。
子どもの適切な時期も考えず、そろそろひらがなを覚えてほしい。だからお稽古もしくは
自宅でひらがなのプリントをさせる。ではなく、楽しく適切な時期に文字に触れること
ができるのはモンテッソーリ教育のみです。