気になる栄養ワード*トランス脂肪酸*

2020.09.21 食育

どこかで聞いたことがあるけど、よくわからないことってありますよね。

気になる栄養ワードでは、食や栄養に関するトピックから、注目のワードを取り上げ、詳しくお話していきます。

今回は「トランス脂肪酸」について…

近年、アメリカをはじめとして、食品中の「トランス脂肪酸」を削減または使用禁止する動きが高まっています。

トランス脂肪酸って、何となく聞いたことがある方もいることと思います。

日本国内でも、大手ファーストフード店をはじめ、食品メーカーがトランス脂肪酸の低減に取り組み始めているようです。

「脂肪」とつくから油に関係するのかなぁ…と何となくイメージするトランス脂肪酸。

一体どんなものでどのように付き合っていけばよいのでしょうか?

■トランス脂肪酸とは?

トランス脂肪酸は、天然由来のもの(牛などの胃で作り出される)と食品加工の際に工業的に作り出されるものがあります。

問題となっているのは後者、「工業的につくりだされるもの」です。

脂肪酸というのは、脂質を構成する成分なのですが、化学的な結合の形の違いによって、性質が変わるという特徴があります。

トランス脂肪酸は、トランス型の脂肪酸ということです。

■なぜ、トランス脂肪酸が必要なのか?

トランス脂肪酸が作り出される理由は、大きく2つあります。

①植物油の脱臭処理のため

家庭でも利用するサラダ油などの植物油は、脱臭のため高温加熱処理が施されてから製品となります。

200℃以上の超高温で処理されるのですが、その際に、わずかに脂肪酸の化学構造が変化し、トランス脂肪酸が発生してしまうのです。

②バターよりもコストを抑えた油脂製品を作るため

バターはパンや洋菓子づくりに欠かせないものですが、全てをバターで賄うのはコストがかかり、供給も安定しません。

そこで、液体の油に水素を添加する「部分水素添加」という技術が考え出されました。

こうすることで、液体の油が個体の脂に変化し、いわゆるマーガリンやショートニングなどに加工できるようになるのです。

工業的にバターの代用が生産できるようになると、コストを抑え、大量に生産ができるようになるなどのメリットがあります。

そのため、多くのパンや洋菓子メーカーが原材料としてマーガリンやショートニングを使うようになりました。

■トランス脂肪酸は体に悪いのか?

トランス脂肪酸自体は、人間の体にどうしても必要なものではありません。

摂り過ぎは、動脈硬化や脳梗塞、肥満やアレルギーなどのリスクを高めます。(トランス脂肪酸に限ったことではありませんが…)

しかし、健康のためには適度な脂質は必要なので、脂質はバランスと量に注意して摂ることが大切です。

■トランス脂肪酸の多い食品

代表的なものは以下のとおりです。

☑・マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなどを原料としたパン類、ケーキ、ドーナツ、クッキーなどの洋菓子類

☑・フライドポテトやチキンナゲットなどのファーストフード類

☑・スナック菓子やカップ麺など

特に、油脂をたっぷり使うデニッシュやクロワッサン、パイなどでトランス脂肪酸が多い傾向が明らかになっています。

こうして見ると、子供が好んで口にするものに、トランス脂肪酸が多いことがうかがえますね…

子供は大人に比べて体が小さく、食べたものの影響を受けやすいため、毎日の食事やおやつの内容にも気を配りたいものです。

ただ、これらの食品を絶対に食べてはいけないということではありません。

「パン食べちゃダメ」「マーガリン使っちゃダメ」「お菓子食べちゃダメ」なんてことはありません。

先ほども申し上げましたが、どの食べ物でも「量」が重要なのです!!

一般的な食生活の日本人では、欧米諸国に比べると大幅にトランス脂肪酸の摂取が少なく、健康被害が出るレベルではないという調査結果があります。

つまり、極端に偏った食生活を長年続けているということでなければ、大きな心配はありませんので、ご安心を!!

■トランス脂肪酸との付き合い方

欧米諸国で進むトランス脂肪酸削減への取り組みは、日本国内にも徐々に広がりつつあるようです。

某大手ファーストフードでは、数年前に使用する揚げ油の見直しを実施、ホームページでも公表しています。

また、パンや洋菓子類、油脂メーカーからは、トランス脂肪酸を削減した商品も出てきています。

食べ物は体をつくるものですから、特に子供には安心・安全なものを食べさせたいというのが親心。

トランス脂肪酸を必要以上に悪とみなし、完全に避けるというのではなく、上手に利用していければいいのではないでしょうか。

例えば、おやつを選ぶ時には…

・クッキーやドーナツばかりではなく、おせんべいやフルーツなども組み合わせる

・スナック菓子であれば、時々はノンフライのものを買う

・ファーストフードのサイドメニューを時々サラダにする

・デニッシュのような菓子パンの回数を減らす

などなど、ちょっと工夫するだけでもトランス脂肪酸は減らすことができますよ!!

たくさんの食べ物と情報であふれている時代です。

正誤定かでない目先の情報だけで、子供の食生活を振り回すのではなく、子供の食を管理する大人が正しい知識を持ち、食べ物との適切な付き合い方をしていってほしいと思います。

ひいてはそれが、将来子供自身が安心・安全な食生活を築く土台となるはずです。